地方だからと悩むWeb担当者が上手に発信するためには? #webと生きる

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両親の仕事の都合で転勤ばかりだったわたしにとって、唯一8年間住んだ名古屋は、思い入れのある街でした。

数々の店が立ち並ぶ大都会「栄」も、オフィスのおかげでキリッとした姿になる「伏見」も、わたしを育ててくれた小さな田舎「新瑞橋(あらたまばし)」も。

数年前、再び引っ越しが決まって訪れた東京には、正直大きな魅力は感じなくて。

それでも、数々の店が立ち並ぶ大都会「渋谷」、オフィスのおかげでキリッとした姿になる「丸の内」、引っ越した先の小さな田舎「柴又」は、どれも眩しくて華やかでした。

ズカズカと歩く人々からはなにか急いた雰囲気を感じるし、決して居心地が良いってわけでもないのだけれど。

それでも、大都市だとばかり思っていた「名古屋」では、敵わない強さがあるのだということを、子どもながらに知りました。

それから10年。わたしはもうほとんど東京の子で、方言も忘れてしまったような気がします。

ただ、心のどこかではずっと「名古屋」を拠り所にしながら働く社会人になりました。


もうすでに東京の子だけど、なんとなくどこか育った街に想いを馳せて繋がることができたらと、思い描いた遠い日の記憶を蘇らせながらとあるイベントに参加してきました。

4月22日、「エニシア静岡」で開催された『milieu』編集長・塩谷舞さん(@ciotan)のトークイベントです。

イベントの概要は以下。

都心からの情報は溢れても、地方発の情報はなかなか広まりにくい…。なんて感じたことがある方はいらっしゃいませんか?「インターネットで距離の壁がなくなった」といえど、情報の格差は存在します。

でも地方から、それこそ静岡からも、日本中に届けたい情報があります。SNSやWEBを使って届けたい人たちに届く情報発信術や、地方に人を連れてくる情報の伝え方を手に入れませんか。

今回はWebメディア「milieu」編集長であり人気webライターの塩谷舞さんをお迎えして、SNSでの魅力的な情報発信方法や地方に人を連れてくるための情報発信術を学べる講演会を開催します。(イベント公式サイトより)

ちなみに、ハッシュタグは「#webと生きる」。イベント中の空気感を感じることができるので、ご興味ある方はぜひ合わせてご覧ください!

地方が上手にWebと繋がるために

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【塩谷舞(Mai Shiotani)】(プロフィールは、milieuより引用)
milieu編集長。1988年大阪・千里生まれ。京都市立芸術大学 美術学部 総合芸術学科卒業。大学時代にアートマガジンSHAKE ART!を創刊、展覧会のキュレーションやメディア運営を行う。2012年CINRA入社、Webディレクター・PRを経て2015年からフリーランス。執筆・司会業などを行う。THE BAKE MAGAZINE編集長、DemoDay.Tokyoオーガナイザーなども兼任。(Twitter | Instagram | Facebook

「わたしは関西に住んでいるときから、積極的に情報発信を行なっていました。でも、周囲の人からはある言葉を言われる機会が多くて、それが嫌だったんです。その言葉が、こちら」

「頑張って!」「応援してるわ〜!」

「『いや、応援ってなんやねん。みんなも一緒に頑張ろうや!』と思って(笑)

けれど、関西から東京に引っ越してくると、“一緒に頑張ろう!”と言ってくれる仲間に出会えるようになって。東京の良さを感じるようになりました。

ただ、わたし、もうすぐNYに引越すことが決まっているんですね。それを知ると、今度は東京の人々まで

「頑張って!」「応援してるよ〜!」

と言ってきた。ですがもう、『応援ってなんやねん!』とは思いませんでした。むしろ

「OK! 任せて!」

と、思えるようになったんです。

世界から日本を見たときに、クリエイティブの質が高いのに発信が足りていない分野がある。だからもっと積極的に発信しなきゃ。わたしがやらなきゃ、誰がやる? くらいの自負が付いてきたんだと思います」

周りの誰かではなく、自分が強く強く伝えること

「大阪にいた頃は、わたしの“熱狂”が足りなかったんだ、と反省しています。地方で情報発信を行なう上でわたしが強く意識しているのは、“誰か一人が熱狂して伝えないと伝わらない”ことです」

イベントの中で一例として挙げられたのは、大分県別府市の「湯~園地」計画。

YouTubeの動画再生回数が100万回を超えたら、古い遊園地を改造して新しいテーマパークに蘇らせるというものでした。

▼詳細は以下

この計画、じつは見事に成功してあっさりと100万回再生を突破。無事「湯~園地」計画は進行して無事オープンしています。

「わたしが助けてあげなくちゃ、自分の出来ることで関わりたい……そう思わせるプロジェクトはネット時代にも大きな反響を呼びます。今の時代は憧れで訴求をするよりも、発展途上な姿をさらけ出したほうが、応援されやすいようになりました」

また、東京でも上手にブランディングできた地域があります。それは「蔵前(台東区)」と「松陰神社前(世田谷区)」。

規模としてはどちらも小さなエリアですが、おしゃれなカフェやパン屋さんなどが増えて、移住者が増えた場所です。

「松陰神社前を広めたのには、“松陰神社やばいキャンペーン”というすごい名前の企画を打ち出した鈴木さんの影響があります」

「共感マーケティング……もっといくと、『同情マーケティング』のようなものが盛んになっている昨今、その全てが良いとは思いません。でも、最初のとっかかりの部分では『同情』でもいい。

それだけじゃ長期的な効果は見込めませんが、一番最初の『助けてあげよう!』『面白そうなことやってるな!』と、協力者を増やすためには必要なことだと思います。

別府の例も、松陰神社の例も、インターネットを上手に使っている人、口コミ力の高い人を巻き込んでいったことが勝因でもあると思います」

【公式】アカウントは、本当に必要?

「最近は、“公式アカウントを運用しているのになかなか効果が出ない”というご相談を受けることがあります。多くのアカウントをどれどれ、と見せていただいた中で感じた発信力の付かない公式アカウントは、だいたいが“神様目線”でした」

ー神様目線。
「お待ちかねの」「待望の」「ついに」などを入れ込んだ発信のことを指して、塩谷さんはそう呼びます。

「これって、大企業の公式アカウントを参考にした運用だと思うのですが、正直、知らないブランドの情報をいきなり上から目線で出されても『知らんがな』ってなりませんか? SNSは個人が中心の世界です。TwitterもFacebookも、血の通った人間の小さな発信力がインターネットを介して広くたくさんの人に届くようになったんです」

「情報が上から下に流れる時代ではなくなりました。情報の末端を担う人々が情報を制する時代になった。既得権益があるから広まりやすいとか、そういう世界ではなくなりました。

つまり、新聞社も企業も地方のいち商店も、“インターネット”という同じ土俵に立っています」

むしろ、一部プロの報道よりも、一億人の個人のSNS投稿のほうが情報としては早くなってしまいました。火事の現場にヘリコプターが駆けつける前に、誰かがSNSに動画を投稿しています。

だから、『地方だから』『個人だから』というのはもはやネガティブポイントではなく、「地方でも、個人でも、インターネットの力を使って、誰でも強く情報を届けられる時代がきたのです。

また、イベントの内容とは前後しますが、Facebookを利用した訴求では、上記の日産自動車の広告も上手な活用事例として取り上げられました。

「日産自動車さんがここで届けたかったのは、自動運転技術のすごさ。でもただ自動運転をしている広告を入れ込んだだけでは、自動運転に強い興味を持つ人くらいにしか届かないはずです。

だから、実際の広告を見せる前に”自動で動く椅子”と、“いかにもFacebookでの友人にいそうな人”を動画内で登場させることで、親近感を沸かせたんです。企業広告なのに、冒頭だけ友達のフリをしてるんですよね」

「そう、それが言いたかった!」とつい言いたくなる記事を、届けられていますか?

Web上で読まれる記事には、大きく分けて3つの流入経路があります。

  • 検索エンジンからの流入
  • ニュースアプリやニュースサイトからの流入
  • SNSからの流入

「SNSで見つけた記事って、さらにSNSでシェアされることが多いんですよね。Googleで検索した記事をわざわざSNSでシェアしようと思うことってほとんどないじゃないですか。

だからわたしは、SNSでどうシェアされるか? というところも強く考えて記事をつくっています。そもそも、SNSのタイムラインって、その人の長い自己紹介みたいなものなんですよね。

どの記事をシェアするか、どんな発言をするか……という積み重ねで、自分のアイデンティティーや考え方を打ち出している場所です」

とくに、「そう、それが言いたかった!」と多くの読者を唸らせたのが以下の記事。(書き手は、現在BuzzFeedで働くnarumiさん)

2015年に公開された記事ですが、Facebookいいねは10万超え。Web界隈を超えて、多くの読者に届いた記事でした。

「人って、自分に関わる業界のことは気になるじゃないですか。この記事でいうと、小学校に通っていなかった方はほとんどいないはずですから、日本国民ほぼ全員がターゲット読者です。

かつ、結構な割合の人が、『小学生だった頃に先生に言いたくても言えなかったこと』を抱えているんですよね。

だからこの記事をシェアするとき多くの人が『自分の小学生の頃は、こんな不満があった!』という自分ゴトを添えてFacebookでシェアしたんです。

なぜFaccebookなのか? というと、大多数の人はFacebookを同級生同士のコミュニケーションツールとして利用しています。

同級生にLINEするほどじゃないけど、この記事をシェアすることによって、古い友人と懐かしい話題で語らいたい……という気持ちが働いたんだと思います。

どんな記事にでも届けたい情報はあります。ただし、それをストレートに発言したからといって届くわけではありません。それよりも“どの感情のスイッチ”を押したら、多くの人に届くのかを考えるんです」


塩谷さんがこれまでに公開した記事には、必ず「届けたい情報」「感情のスイッチ」のふたつが設定されています。

ここからはリンクが少し増えますが、もしもお時間のある際にはこのふたつのポイントに着眼しながら読んでみていただきたいです。(日頃何気なく読んでいる記事も、改めて読み返してみるとおもしろいかもしれません)

生まれてこのかた、ずっと不況。「ゆとり世代」は、知恵を出して仕事をつくる

届けたい情報:これまでにない日めくりカレンダーを知って欲しい!
感情のスイッチ:ゆとり世代ってずっとバカにされてきてない?

SNSは、誰かを袋叩きにするための場所?それとも、社会を変えていくための武器?

届けたい情報:シリコンバレー的な思想
感情のスイッチ:最近の日本の炎上、もう見るのも疲れた

「好きなもの」があるゆえに、付き合う人を選びすぎて生きてない?

届けたい情報:アシックスさん、文化的でええことしてる
感情のスイッチ:わたしはこだわりのある人間です

優秀な人財が、大きな企業の中でもつぶされず、その人らしく輝くためには?

届けたい情報:BAKE求人中です
感情のスイッチ:大企業勤めの私。優秀なのに活躍できない現状に、不満を抱えている

細分化されすぎた東京の芸術は、本当に「日本一」なのか?

届けたい情報:静岡の劇団SPACめっちゃいい!
感情のスイッチ:東京で芸術やってるみなさん、不満はありませんか?


これらの記事をつくる上では、常に以下のような流れを大切にしながら記事に落とし込むという塩谷さん。

  1. いろんな人の不満を聞いてみる(SNSで調べる、実際に愚痴を聞いてみる)
  2. 上位概念で考える
  3. (1)の人が、ホッとするような方向の突破口や、私もそれ言いたかったの!と共感するような切り口を、記事でつくる

「Webでは、マスメディアに比べて力が弱いと言われているので、インフルエンサーもたくさん用意したり、Webメディアにもたくさん掲載されることが“良いPR”とされていたりします。

ただ、闇雲にたくさんのメディアに出るよりも、一つの記事の中でガツンと想いを届けるほうが、効果が高かったりもします。

『milieu』の記事は、一記事しっかり読むと5分くらいかかってしまうんです。でも、この5分、というのは大切です。

SNSのバズだけでは、一瞬のエンタメにはなっても、長く心に残りません。ただ、『milieu』を5分も読んでもらえばだいたい“塩谷舞”がどんな人物なのかわかってもらえる。記憶に残るんです。

そのたった、でも、“5分”の集中が親近感を持ってもらうためには必要な要素だと思っています」

ちなみに、離脱させないためのコンテンツとして必要な要素はこんな感じです。(控えめにいっても、めっちゃ多い)

“ヨソモノ視点”は、上手に使えば武器になる

そして、地方での情報発信で一番忘れてしまいがちなのは、ヨソモノ視点です。

「ヨソモノ視点がとても活きた事例として挙げられるのは、はあちゅうさんのツイートです。福井県民の観光スポットを尋ねても、そこに住んでる方々からはあまりポジティブな意見が返ってこない。

ただ、わたしが以前福井県の大野市を取材したときに食べた焼き鳥屋さんが絶品だったので、それをはあちゅうさんに伝えたら、『人生ベスト鶏肉』に認められたんですよ。

地元の人にとっては、この鶏肉のおいしさは当たり前すぎて、そのポテンシャルに気付きにくかったのかもしれません。

Uターン、Iターンの方は、長い間住んでいるわけではないからこその視点が強いです。どっぷりその地域に浸かっていないからわかる魅力は、外の人に向けて発信する上での大きな武器になります」

ヨソモノ視点は、地方での情報発信以外でも大切な視点です。

たとえば、企業のオウンドメディアで記事を公開する場合。

「せっかく◯◯ちゃんが頑張ったし……」「制作部署が、あんなに時間をかけたから……」と、“もったいない”とか”ねぎらい”の感情を元に記事を送り出してしまっては、なかなか人には届きづらいものです。

「頑張った」という過程は、組織を一歩出れば無意味です。社会全体を見て、それでもなおお面白いと言えるものは何なのか? というのを、ヨソモノ視点で考えます」

「なぜ届けるべきなのか」にまで考えを巡らせることができる記事こそが、多くの人の元に届く記事なのだと塩谷さんは語ります。

「自分たちしかわからない専門用語を使ってはいないか、届けるべき対象はブレていないかどうかなどは、記事とはまったく関係のない第三者にチェックしてもらうことで客観的に見れるようになります」

SNSを効果的に活用して、記事をより多くの人に届ける

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ここまででもとんでもない情報量なのですが、ここからはさらにより多くの人に記事を届けるためのSNS活用法です。

(イベント中、ハッシュタグで追ってくださる方が非常にたくさんいらしたので、ツイートも埋め込みながらさらりと進めていきます!)

「昔、わたしのTwitterではこんな風に京都市美術館で開催されている美術大学の卒業制作展をまとめていたことがあるんです。

ものすごくニッチなターゲットではありますが、この情報を欲しいと思っていた人にはしっかりと届いているツイートでした」

SNS(メインはTwitter)で情報を届ける際には、以下のようなポイントに着目してみるとグッと魅力的なアカウントになるのだそう。

  • 有益である
  • 第三者に見せても理解してもらえる
  • 投稿内容に一貫性がある

「キャラ立ちできるようなツイートを心がけることで、一気に個人の発信力は付けられると思います。

もちろん、そんなに簡単にバズりません。フォロワーの1%が反応してくれるようなツイート(500フォロワーなら5ふぁぼ、1,000フォロワーなら10ふぁぼ、など)を指標にしながら、ゆっくりアカウントのあり方を確立させていきましょう。(と、カツセマサヒコが言っていました……!)」

人よりも時間をかけることで、誰よりも目立つ・届く存在に

「SNSって、本来はみんな片手間で更新しているはずです。でも、編集スキルや投稿のコツを活かして、30分なり1時間なり時間をかけていけば、誰よりも目立つツイートとしてできあがるはず。そうすれば、きっと多くの人に届くようになります」

また、良い記事をつくったけれどなかなかSNSでシェアされない場合には、原因の一つに「記事のサムネイル出ていない問題」が挙げられます。

このような場合には、「Card validator(Twitter)」と「シェデバッガー(Facebook)」のふたつを活用することで、TwitterやFacebookで投稿されるとどのように見えるのかをあらかじめ確認できます。

「ほかにも、記事がバズった場合にはサーバーが落ちることもありますが、これは本当に大きな機会損失……! あらかじめしっかり対策しておくことも重要です。

などなど、気をつけておきたいことはまだまだ山ほどあるので、よければ以下の記事を読んでみてください……!」


ここまで、駆け足でたくさんのポイントを解説してくださった塩谷さん。

最後に、地方で発信を続ける方へメッセージを送ります。

「冒頭でも話した通り、わたしは地方で頑張っているときに、周囲から少し浮いているような気がして、活動をセーブしてしまったんです。『熱狂』しきれなかった。

でも、地方に住んでいても、一緒に発信できる仲間を見つけられたのなら、状況は変わります。その仲間と日頃離れていても、SNS越しに励ましあったりして、きっと頑張っていけるはずです。だからこそ、地方で頑張る上ではまずはみんなで繋がることが大切なことではないかと感じています。

もしも、静岡で“ローカルの成功事例”を作ることができたなら、日本中に注目されるようになるはずです。ここまででご紹介した情報を上手に活用して、地方から効果的に発信していける方法を探していきましょう!」

おわりに

以上、塩谷舞さんのトークイベントをレポートしました!(抜けモレあったらごめんなさい!)

繰り返しになりますが、イベントのリアルタイムの雰囲気は「#webと生きる」からご覧いただけます。興味のある方は、ぜひぜひ覗いてみてくださいね。(今回、羽生結弦を抜いてトレンド1位に躍り出たとの情報も!)

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!

All Photo by:Takumi Yano(note:https://note.mu/takumi_yano